組織開発の根底にある4つの価値観|組織開発探究シリーズ④

組織開発探究シリーズ第4回のテーマは「組織開発の根底にある4つの価値観」です。

前回の記事では、組織開発のさまざまな手法に共通する「組織開発の3つのステップ」という、組織開発の基本的な進め方について紹介しましたが、今回は組織開発の根底にある価値観について考えていきたいと思います。

組織開発の根底にある4つの価値観

組織開発は、組織が今の状態よりも良くなること、以前に紹介した表現でいうと「組織が円滑にworkする」ことを目指します。

それでは、どのような状態が組織にとって望ましいのか?

たとえば、組織は円滑にworkしているが、独裁的なリーダーのもとで、社員が酷使されて疲弊している…という状態は健全とはいえないですよね。

この問いに答えるのが、組織開発の約70年の歴史の中で育まれてきた、「組織開発の根底にある4つの価値観」です。

組織開発の研究者であり、実践者でもあるロバート・マーシャクは、「組織開発は価値観ベースの実践である」と主張しています。

マーシャクによる、組織開発は価値観ベースの実践である、という主張は、組織開発であるものと、そうでないものを、手法によって区別できるものではない、ということを意味しています。例えば、チーム・ビルディングは組織開発であり、目標による管理は組織開発ではない、といった単純な議論はできない、ということです。実施する手法や取り組み、働きかけのベースに、組織開発で重視している価値観があるかどうかがポイントとなる、ということです。

出典:組織開発の探究

「組織開発で重視している価値観」というのが、下記の「組織開発の根底にある4つの価値観」です。

人間尊重の価値観
民主的な価値観
クライアント中心の価値観
社会・エコロジカル的システム志向性

私たちは、組織開発を進める際には、組織開発実践者である私たちはもちろん、クライアントも含めた関係者一堂で、この「4つの価値観」を共有することが大切だと考えています。

それでは、それぞれの価値観について、詳しく見ていきましょう💡

人間尊重の価値観

人間尊重の価値観とは、人間は基本的に善であり、最適な場さえ与えられれば、自律的かつ主体的にその人が持つ力を発揮すると捉えることを重視する考え方です。

出典:入門組織開発

マーシャクは、この価値観を「ヒューマニスティックな哲学(humanistic philosophy)」という言葉で表現しています。

たとえば、組織の業績を上げるために、社員を酷使して働かせ、その結果、身体やメンタルの不調を訴える社員が続出するような状態は、「人間を尊重している」とはいえない状態です。

この「人間尊重の価値観」について、組織開発の有名な研究者であるダグラス・マクレガーが提唱した「X理論・Y理論」の考え方で説明したいと思います。

「X理論・Y理論」とは、マネージャーが「メンバーをどういう人間だと捉えるか」は、XとYの2つに大別できるとした考え方です。

「人は本来怠け者で仕事をしたがらないので、強制や命令は必要である」と性悪説的に捉えるのが「X理論」、「人は適切な条件のもとでは主体的かつ創造的に仕事をする」と性善説的に捉えるのが「Y理論」です。

こちらの説明も引用したいと思います👇

「X理論」をもつマネージャーは、人は生まれつき仕事が嫌い、したがって人には命令と監督が必要で、目標に達しない場合は罰則を与えることが必要だと考えます。一方、「Y理論」をもつマネージャーは、人は自ら実現したい目標のためには自己統制を発揮し、個人と企業の目標が一致すれば、人は自発的に自分の能力を高め、創意工夫をし、自発的に行動すると考えます。

つまり、X理論をもつマネージャーは指示命令的で、その結果、部下は受動的になりやすくなります。他方、Y理論をもつマネージャーは部下に適切な目標と責任を与え、部下の力を引き出すような関わり方をし、その結果、部下は主体的になっていきます。

出典:入門組織開発

経営層やマネージャーの人間観(マネジメント観)は、組織の「ソフトな側面(人間的側面)」に強く影響するといわれています。

「X理論」に基づくマネジメントのもとでは、人や関係性は疲弊していきます。組織の状態をより良くするためには、「Y理論」をベースに組織の「ソフトな側面(人間的側面)」のマネジメントに取り組む必要があります。

マクレガーは、「Y理論」に基づくマネジメントによって、個人の主体性と能力が開花し、自己実現の欲求の充足にもつながり、結果、組織も活性化すると考えました。

このような考え方が背景にあり、組織開発では「人間尊重の価値観」が大切にされています。

私自身も、組織開発実践者として、また、一経営者としても「Y理論」「人間尊重の価値観」を日頃から大切にしたいと思っています。

民主的な価値観

民主的な価値観とは、ものごとを進めて決定するには、それに関連する、できる限り多くの人が参加し関与した方が決定の質が高まり、関与した人々やお互いの関係性にとっても効果的である、と捉える考え方です。たとえば、組織や部門で戦略を立案する時などは、可能な限り多くの人の意見を聞くとともに、立案の過程に参加し関与できることを組織開発では重視します。

出典:入門組織開発

マーシャクは、この価値観を「民主的な原理(democratic principles)」という言葉で表現しています。

この価値観には、 Tグループやアクションリサーチなどを創始したことでも有名なクルト・レヴィンが大きく影響しているといわれています。

レヴィンは第2次世界大戦中にドイツからアメリカに亡命した経験があり、この経験から、彼は「独裁的」ではなく、「民主的」であることを重視しました。

意思決定をする際に、「民主的」に多くの人が関与することは、時間も労力も掛かり、短期的なスピード感やスムーズさでいうと、マイナスな点が多いように感じられるかもしれません。

しかし、長期的な視点で考えると、できる限り多くの人が意思決定プロセスに関与することは、上記にあるように、決定の質の高まりや関係性の向上を生みだし、加えて、組織や事業を自分事として捉えられる社員を増やすことにもつながるのではないかと思います。

「民主的」であることは、組織の長期的な発展を目指す上で大切にしたい価値観です。

クライアント中心の価値観

クライアント(当事者)中心の価値観とは、組織の当事者が現状と変革にオーナーシップをもつこと、つまり、当事者意識の高まりと主体的に変革に取り組むことを重視します。

出典:入門組織開発

マーシャクは、この価値観を「クライアント中心のコンサルティング(client-centered consulting)」という言葉で表現しています。

こちらの説明も引用したいと思います👇

組織開発は、組織開発実践者が中心となって取り組みが行われるのではなく、クライアントである当事者が中心となって取り組まれることが重要だとする考え方です。クライアント・システムが自ら変わっていく過程を、組織開発実践者はパートナーとして支援していきます。

出典:組織開発の探究

クライアント・システム(組織)が自ら変わっていく力を持つことは、現在のような予測不能で変化が大きい環境の中では、より一層大切になってくるのではないかと思います。

組織の継続的かつ自律的な発展のためには、「クライアント中心の価値観」を大切にし、組織のメンバーのオーナーシップを育むことが重要です。

社会・エコロジカル的システム志向性

社会・エコロジカル的システム志向性とは、組織開発が目指すところは、組織内の視点だけで語れるものではなく、より広いシステムである社会や環境レベルを考慮する必要がある、と捉える考え方です。つまり、組織開発の結果、社会や環境、そして世界に悪影響が生じることは避ける必要があるという発想です。

出典:入門組織開発

マーシャクは、この価値観を「社会・生命的システム指向(social-ecological system orientation)」という言葉で表現しています。

自分の会社の利益だけを追求するのではなく、グローバル社会や地球環境との共存を目指すことが大切だという価値観です。

目の前の仕事に取り組んでいる日々の中では、忘れてしまいがちな視点かもしれませんが、社会にとって存在意義のある企業で在るために大切にしたい価値観です。

以上が、それぞれの価値観についての解説でしたが、いかがでしたでしょうか?

この章の最後に、「組織開発の根底にある4つの価値観」を図にまとめたものも載せておきます👇

組織開発は価値観ベースの実践である

ここまでそれぞれの価値観について紹介をしてきましたが、あらためて記事の冒頭で紹介した、マーシャクの「組織開発は価値観ベースの実践である」という言葉に立ち戻ってみたいと思います👇

マーシャクの「組織開発は価値観ベースの実践である」という言葉は、組織開発の手法を実践しさえすれば組織開発実践者である、とはいえないこと、つまり、組織開発の根底にある価値観を体現することで、初めて組織開発実践者といえる、ということを表しています。

出典:組織開発の探究

私たちも組織開発実践者として、「組織開発の根底にある4つの価値観」を体現することを大切にしています。

そして、共に組織開発を推進する、クライアントも含めた関係者一堂で、この価値観を共有し、体現していくことが重要だと考えています。

次回以降の記事では、組織開発の具体的な手法も紹介していきたいと思いますが、実際に手法を実践していくフェーズにおいても、根底には今回紹介した価値観があることを忘れずに実践していきたいものです。

以上、組織開発探究シリーズの第4回「組織開発の根底にある4つの価値観」でした!

FLYHIGH Lab.
代表  小田桐 翔大